研究テーマ

サイエンスコミュニケーションが果たすべき機能の1つに、社会全体の科学リテラシー向上への寄与という使命がある。効果的なサイエンスコミュニケーションを推進するためのスキルの1つとして、サイエンスのストーリーを語るための文章作法(サイエンスライティング)が有効である。サイエンスライティング研究は、これまで個々人の経験、暗黙知に頼っていたサイエンスライティング作法を体系的に分析・総合することにより、初心者にも広く活用できるライティング作法と教育法の共有を目的とする

サイエンスコミュニケーションの対象は、サイエンスの専門家、非専門家を問わない。ただしたとえサイエンスの専門家といえども、すべての分野に通じているわけではない。したがってサイエンスコミュニケーションの実践は、同じ目線から相互の科学リテラシーの溝を埋める活動であるべきである(1)。サイエンスコミュニケーションの実践では、難しい概念を易しく噛み砕くことは大切であるが、「わかりやすさ」を追求するあまり「つまらない」ストーリに堕する危険もある。サイエンスの情報を伝える際、サイエンスについて語る際に効果的なのは、「わかりやすさ」よりもむしろ「ストーリー性」だったりする。サイエンスを物語るスキルの涵養には、魅力的なサイエンスライティング作法の習得が効果的であると考えられる(2)

日本語はサイエンスを論理的に語る上で不適な言語であるという意見も聞くが、本研究はそうした意見に与しない。サイエンスを日本語で魅力的に語るためのスキルアップは可能であると考えるからだ。そしてサイエンスライティング能力の向上は、本人の論理的な思考能力、科学リテラシーの向上にも益するものと信じる。また、教育法が確立し、市民講座のカリキュラムとして組み込むことができれば、生涯学習の一環として実施することで、受講者のみならず、地域コミュニティの科学リテラシー向上にも貢献できるものと思われる。

 


【引用文献】

(1)渡辺政隆,サイエンスコミュニケーション2.0 へ,日本サイエンスコミュニケーション協会,2012.

(2)渡辺政隆,一粒の柿の種~サイエンスコミュニケーションの広がり,岩波書店,2008.